『飛躍への挑戦』葛西敬之著
JR東海の歴史、東海道新幹線の歴史、リニアへの挑戦
リニアの経済性を論じた書籍を探していたのですが、さっぱり見つからず、図書館で見つけたJR東海代表取締役名誉会長の書籍。
まぁ、読んでみるかと、と読み始めたのですが、結果オーライでした。
読み物としては大変おもしろかったです。
大枠として3部構成となっており、①国鉄改革、②本州3社分割後、JR東海の負の遺産の整理、③1992年以降の近代JR東海の営業施策と展開されます。
読んでいて本当におもしろいのですが、一歩引いて考えると、ドロドロの利権を巡る闘争が①〜②と繰り広げられます。
また、筆者の熱の入れ様が③に比べて①②の方が圧倒的に強い笑
半ば葛西氏の大局的な見地に感心しつつ、半ば積年の恨みを晴らすかの如き内容に辟易としながらも、国鉄改革・東海道新幹線の利権を巡る闘いの舞台裏を理解することができます。
個人的な感想として、ドロドロした政治色満載の舞台はまぁ良いとして、やはり東海道新幹線は儲かるんだな、というのをしみじみと感じました。
JR東、JR西、運輸省とそれぞれの立場から、全員がドル箱の東海道新幹線に執着を燃やす様が伝わります。
翻ると、東海道以外の新幹線が全然儲からないんだな、ということが想像されます。
やはり鉄道は輸送密度がモノを言うのですね。
少し言及があって、おもしろかったのが、品川で東海道新幹線と中央新幹線(リニア)の結節点ができなかった場合、新宿駅が東端の候補となっていたかも、との記載。
それはそれで、とってもワクワクしますよね。
一体どんなビジョンになっていたのでしょうね。
また安心した点として、リニアの安全性に関する記載。
『車上や沿線の磁界は世界保健機関(WHO)が推奨する国際ガイドラインをはるかに下回り、日常の生活空間に存在する磁場と変わらない』(p.338)
とのことです。
橋山先生の書籍では、磁場に関してはリスクのように扱われていたのですが(『必要か、リニア新幹線』橋山禮治郎著、p.131)、この点もクリアになっているようです。
やはり東海道新幹線は儲かる。
『この状況に安住していても、今後二〇〜三〇年間の安定的な利益は約束されるだろう。しかし、この間を無為に過ごすことは次なる時代における停滞の種をまくことになる。
(中略)
東海道新幹線の旅客から収受した資金をもってリニア中央新幹線を建設することは、これまで国鉄の過去債務返済に充てられていた東海道新幹線の収益を次世代の旅客の利便性向上に活用することであり、まさに当社創業の使命そのものである。』(p.347)
リニア新幹線の先行きから目が離せないですね。
こーた