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『N女の研究』中村安希

NPOというキャリアも存在する

 

書籍レビューです。

 

中村安希氏の『N女の研究』を読みました。

 

filmart.co.jp

 

久々に良作を読みました。

 

ノンフィクション作家によるドキュメンタリー作品ですね。

 

NPOなどの非営利セクターから営利の社会的企業までを含めたソーシャルセクターで働く女性を総称してN女と呼んでいます」

 

「大企業に就職ができる高い学歴や高い職歴、事業の企画運営ノウハウ等をもちながら、あえてソーシャルセクターを就職先に選ぶ女性たちが出現し始めている」

 

そんなN女10名にインタビューした結果を記載した作品が、この『N女の研究』です。

 

1番印象的だったのが、『自己を犠牲にしない』という軸です。

 

NPOと聞くと、され社会貢献だ、やれセーフティーネットだ、と自己を二の次にした喜捨の精神論が思い浮かびますが、当作品で強調されていたことは、まず自己を犠牲にしない、ということです。

 

自分は社会の一員であり、自分が幸せになれないのに、どうやって他者を幸せにするんだ、という至極一般的な考え方の下で、N女たちが行動していることで、共感を持てます。

 

その上で、『かつては家族(血縁)、会社(社縁)、地域(地縁)といった中間集団によって社会につなぎとめられていたが、それらの共同体が機能を果たせなくなったことで、社会的に排除されるヒトがでてきた』事実を如何に良い方向に持って行くか。

 

登場するN女たちが、ここについてどのような考えをもっているか、あるいはどのような人生経験を経たことで、そのように考え方になったのか。

 

その展開が大変興味深かったです。

 

また作品全体を通して、N女のインタビューが転載されている訳ではなく、作者の軸を中心に解説がなされているため、当事者の人たちの意見はそのままに見事に現代社会が描写されており、非常に作者の訴えが伝わりやすく、考えさせられる部分が多分にありました。

 

またティーチ・フォー・ジャパンやコモンビート、クロスフィールズといったNPOを知る良い機会になりましたし、『世の中には社会に進出したくない、性別役割分担を維持したい、地位向上を目指してガツガツしたくない、実は子供が嫌い』というように、[女性]という一つの枠で考えることはできない、『女性社会が一枚岩でない』という主張も大変説得力がありました。

 

ソーシャルセクター、と聞くとまだまだ異世界な印象を受けてしまいますが、これが今後はもっと一般的な世の中になっていくのでしょうね。

 

こーた