投資に対するみんなの見方が変わってきた
これも社会の変化の1つなんでしょう
最近すごい思うのが、投資に対するみんなの見方が変わってきた、ということです。
今までは、投資と言えば博打と同義語。
投資の極意は"安く買って、高く売る!!"
独特な専門用語が初心者のハードルを高め、やれテクニカルだ、チャートがどうだと、アレルギーを起こしそうになるのも理解できるほど、"投資"のイメージは異世界な雰囲気を醸し出していました。
ところが、ところが、
徐々にじょじょにではありますが、投資という資産形成が一般化しつつありますね。
とても良いことだと思っています。
こう言っては達観しているようですが、ぼくの見ていた投資の面をみなさんも見始めてくれたと勝手に理解しています。。。
そう、投資とは決して博打ではないのです。
誤解を恐れずに言えば、預金で持つか、投資で持つか、といった形態の違いでしかないのです。
もちろん間違った金融商品を買ってはいけません。
それこそ山のように、世間には金融商品がたくさんあります。
それはもちろん、販売者が『販売すること』で利益を得るために金融商品を組成することが多いですし、何の知識も無いヒトが個別株式を長期保有することも望ましくないです。
ですが、時代は発展し、パソコンやスマホで少し検索すれば、良心的な個人投資家の方々が書かれた、良質な投資情報がすぐに手に入る時代になりました。
そんな時代には、"いまこの株を買え!"、"この商品は絶対に儲かる!"といった射幸性をうたう文言は絶対に見つかりません。
良心的な情報ほど、末尾に"投資は自己責任でお願いしますね"とやさしく記載されています。
もはや儲けようという私心など、投資にはないほうが良いのです。
逆にインフレに対する備えであったり、円の減価に対する備えであったり、負けない投資、負けない資産運用が投資の本来的な性格なのです。
投資はこわい、投資は自分とは違う世界のこと、投資はなんだか面倒くさそう、、、
そう思っているあなた。それは多分本来の投資とはちがう側面を見ていますよ。
投資って、思っているよりも、ずっとシンプルなものだと思うんです。
こーた
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これが俗にいう投機ですね
相場はいつも右肩上がりではありません
やはり1番大事なのは何のために投資するのか、という目的だと思います
配当とは何なのか
良い機会ですし、配当とは何かを考えてみる
株主総会の山場も越え、ちょうどいい機会なので、配当とは何なのかを一度考えてみたいと思います。
Wikipediaの概説が明快だったので、引用すると、配当とは下記の定義になるようです。
“企業における配当とは、企業が経営活動の結果として獲得した利益を出資者あるいは株主に分配することをいう”
企業活動の結果はおおむねストック(資産・負債)とフロー(利益・費用)に分けることができます。配当がこのどちらの性格を有するのかも場合によるといえます。
圧倒的に多数を占めるのは、フロー型の配当だと思います。
配当性向〇〇%といったような、当期純利益のうち、いくら配当をするかを定めている企業の配当は、フロー型配当の典型といえます。
一方で、マクセルHDが実施したような特別配当は、過去に積み上げた利益を一時的に還元するという性格からストック型配当といえるでしょう。
アメリカ・日本を問わず、配当は継続的・安定的なものが好まれます。
配当は株主にとってCash inになるため、この時期にこれくらい現金が手に入るな、とある程度の計画性・確実性があったほうが株主側の意向にとっても親和性が高いのでしょう。
対照的なのが自己株式の取得です。
自己株式の取得は、誤解をおそれずに言えば、継続性・安定性は求められません。一種のボーナスのような位置づけですね。
毎期100の利益を上げているような会社が、事業好調で200の利益を上げた場合などに、自己株式の取得が行われます。また個々の株主にとってもCash inは生じません。・・・株を売らなければ
話せば長くなるので、自己株式の話はまた今度に。
話を戻して配当について。
投資家に取って、配当は部分的な利益確定と捉えられます。
これは投資をCashにすることからも明確ですね(たとえ含み損でもです)。
経営者と株主は一種の利益相反の関係にあり、経営者はキャッシュを抱えて事業リスクの低減・あるいは保身を図る、株主は会社が獲得した利益の分配を要求する、という相反する状態ですね。
この利益相反をなくす、あるいは減ずるという意味でも配当は効果がありますね。
投資家に取っては利益確定であり、会社に取っては株主還元ですが、一種のExit(撤退)ととることもできます。
急成長中の会社はどんどんキャッシュが必要で、そのキャッシュがあればあるほど、企業として成長でき、企業価値を高めることができます。
そんな会社は配当をせずに、自社の成長に注力することが、株主にとってもメリットがあるわけなのです。
こう考えると、毎対給与収入があるような勤労者は配当はなくてもOKで企業価値が高まることのほうが重要、人生も終盤で少しずつ投資から撤退しても良いような人に取っては、配当の方が重要性が高い、という傾向もある程度納得できますね。
こーた
配当と自社株買いにについて書きました。
マクセルHDの株主還元を株価から総括する
山は発表翌日だった
132億円の特別配当と大胆な株主還元を打ち出したマクセルHD。
その株価の動向が注目されましたが、6月配当落ちを迎えて、これまでの株価の推移を振り返ってみたいと思います。
身もふたもなく、結論から言うと、特別配当発表翌営業日の5月7日の株価が高値となりました。
なおこの日の高値である1,971円は5月7日の始値でした。
つまり結果論から言うと、5月7日にマクセル株を買うと失敗したことになります。
株価は右肩下がりとなり、250円の特別配当権利落ち日である6月25日に1,664円と5月7日以降の安値を記録します。
6月25日の終値は1,679円で、奇しくも特別配当発表前の株価である1,691円も下回ってしまいます。
なお配当落ち後の6月26日は前日比213円安となり、250円の配当落ちを考慮すると、37円高(前日配当落ち考慮後終値比2.6%高)という結果になります。
(1,466円に250円を足すと1,716円で、4月26日終値である1,691円をかろうじて上回っています)
これまた結果論ですが、配当落ち日の終値で買ったヒトは利益を得られたことになり、成功したことになりますね。
つらつらと述べてきましたが、
株価を結果論で述べることほど無意味なことはないと思っています。
何か意味を見出すとするならば、過去の経験を未来に活かす。
もしくは市場の傾向をつかむ・理解する、ということなるのでしょう。
ただ同期間の市場全体の動きも、TOPIXが4%近く下洛していることから、それほど芳しくなかったと考えられます。
市場のコンセンサスという意味での株価としては、情報を織り込んだ時点が一番評価が高くなり、時間とともに特別配当から今後の成長性、業績期待に視点が移り、株価が落ちてきたと評価することもできるでしょう。
なにはともあれ、市場に132億円が還元されたことは疑いの無い事実です。
今回は短期的な株価動向で、大胆な株主還元を評価しましたが、本来は皆さんのココロの中にどのような印象を与えるか、ということがポイントになるでしょう。
もう少し中長期的な視点で、市場全体に与える影響も加味して、評価したいところですね。
今後も株主還元を真剣に考える企業が増えてくることを願いたいと思います。
こーた
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配当と自己株(自社株)買い
株主還元の方法
株主還元が真剣に考慮される時代になってきました。
ほんの数年前までは株主資本はリスクフリーの資金調達と見なされていた訳ですが、この考え方が変わってきています。
ROE重視の経営を、といっとき盛んに報道されましたが、ようやっと実態が追いついてきた印象です。
株主還元の方法は、配当と自己株買い(場合によって自社株買いとも)に分けられます。
従来の日本株式会社のスタンダードとしては、配当性向10%~30%、自己株買いはしない、というスタンスでした。
その姿勢が変わってきたということですね。
ちなみに売上が爆発的に伸びている企業、いわゆるGrowth株、成長企業は、アメリカでは配当も自己株買いもしない、というのが一般的ですね。AmazonやAlphabet (Google)がこれに当たります。
株主還元に使うお金があれば、成長投資(設備投資や顧客開拓、研究開発)に投資し、企業の成長スピード上げた方が、企業にとっても、株主にとってもハッピーになるからです。
一方で、Value株、成熟企業は株主還元も考慮せざるを得ません。一定の成長は期待するが、その利益の果実を株主にも還元してね、ということです。
それでは株主還元の方法として、配当か、自己株買いか、どちらが望ましいのでしょうか。
株主視点と企業視点と2つの観点があるかと思います。
まず株主還元を行う企業視点で言うと、どちらにせよ大きな違いはありません。
社外に資産(主に現金)が流出するという本質に変わりないからです。
一方で既存株主にとっては大きな違いがあります。
企業が配当を行うと、既存の株主は必ずその配当を受け取ります。配当は株主に取って一つののExit(出口戦略)になり、その分の利益を確定することになります。
復興税率を除くと受取配当から20%が源泉徴収されます。
なお確定申告により、配当所得を総合課税とし、課税所得が330万円以下のかたは税率を下げることも可能です。
一方で自己株式の取得が行われた場合、既存株主は売却しなければ1円も収入を得ることはありません。一方で理論的には取得自己株式に見合う分だけ、株価が上昇するため、キャピタルゲインとしての含み益は増すことになります。
この違いは、株主それぞれの好みによって分かれてくるので、一概にどちらが良い、という話はできないです。
ただ個人的には、自己株式取得の方がより良い株主還元だと考えています。
もしエグジットしたい株主がいれば、株式を売却すれば良いのです。
配当は拒否できません(日本では自動再投資もできません)。そういった意味で自己株取得のほうが個々の株主に選択肢が残されるのです。
また配当は株主にとって、ワンタイムのキャッシュインですが、自己株式の取得は1株当たり利益の向上につながるので、売却するまで半永久的にその果実を享受することができます。
配当の支払対象株式数の削減にもつながるので、1株当たりの配当金額の増加にもつながりやすいですね。
こーた
時代の変化を感じる
日本の経済環境は変わっている
日本の企業姿勢、引いては経済環境が変わってきていることを肌に感じます。
特にここ1、2年の変化は相当なものと言って良いのではないでしょうか。
まずは株主還元強化の姿勢です。
トヨタ自動車 3,000億円、NTTドコモ 3,000億円、三菱商事 3,000億円、NTT 2,500億円、ソニー 2,000億円、他 数知れず....
ほんの数年前に、誰がこのような状況を想定できたでしょうか?
2019年に発表された上記5社の自己株式取得額を合計するだけで、その金額はなんと1兆3,500億円。
自己株式の取得を通じて、その会社自身の企業価値を高める、あるいは余剰資金が市場を介してまた新たなベンチャーを育てたりすることにつながるのです。
自己株式取得は、ある程度時代の潮流になってきました。
あとは慣例的に3割程度で横並びの配当性向を打破する企業が現れることを期待したいですね。
少し事情は異なるにせよ、マクセルホールディングスが流れを変える存在になって欲しいと思います。
別の観点からの環境変化として、不採算企業の救済に外資が参入してくる事例が一般化しつつあります。
シャープに東芝、ジャパンディスプレイ(JDI)。
特に2017年12月に東芝が行った6,000億円に及ぶ第三者割当増資は、日本の資本市場においては異例とも言える手法だったのではないでしょうか。
ゴールドマン・サックスが取りまとめたとされる増資案。
通常は1社がメインスポンサーとなるのが過去からの慣例でしたが、この際の引受先は投資ファンド60社。
この増資実行により、東芝は2018年3月期末の債務超過と上場廃止を回避。
2018年6月に東芝メモリを2兆3千億円で売却。2018年11月から7千億円の自己株式取得を行っています。
仮に第三者割当増資の発行価格2,628円(発行株式数 2.3億株)に対して、直近の株価水準である3,500円で全株売却したとすると約2,000億円の利益が出ることになります。
投資利益率にして33%。。。恐るべし・・・ですね。
業績不振企業に外資の資本が注入される事例を見て思うのは、もはや産業革新機構のような税金を投入するような官製ファンドは不要じゃないかということです。
それなりのリスクに見合った投資が民間からでも期待できるのであれば、『我が国の技術を守る』といった詭弁を盾に、税金を投じてゾンビ企業を生産する必要性はどこにもないのです。
善かれ悪しかれ、これも時代の流れですね。・・・いやむしろ前向きに捉えた方がいいと感じます。
残るは政治ですね。
変わるべきは政治
巨額の財政赤字と、がんじがらめの法律規制を変えないと、日本は良くなりません。
こーた
マクセルホールディングスの株主還元を考える
株主還元が変わる機運か
超大型連休前に多くの決算発表が行われましたね。
4月26日(金)にTDnet適時開示で開示された情報は997件にのぼり、通常の決算発表時の最も多い日ほどではないにせよ、かなりの数の会社が決算を発表したことが窺い知れます。
そんな中でひときわ目を引いた発表を行ったのがマクセルホールディングスでした。
大阪を発祥とする記録メディアと電池を中心とする電気機器メーカーで、一般の人にとっては乾電池とカセットテープが馴染み深い会社ではないでしょうか。
一昔前までは日立製作所の関連会社で日立マクセルという社名でしたが、日立製作所の社会インフラ政策から外れたことにより日立グループから独立しています。
元を辿ると日東電工から分離した企業で、日立グループ時代でも独立心が強かったですね。
肝心の決算発表ですが、控えめに言っても期待外れの結果でした。
2019年3月期は営業利益が前期比40%減益、2020年3月期も営業利益8%減益が見込まれています。
ところが同時に発表された株主還元策に度肝を抜かれました。
特別配当132億円・自己株式取得50億円、合わせて182億円という株主還元です。
マクセルHDの総資産は1,994億円であり、182億円というと総資産の9%、純資産の15%を一気に吐き出すことになります。
株主還元を行うことで株主資本を減らし、資金調達方法を借入金にシフトすることでレバレッジを増やして、ROEを向上するという資本政策です。
村上ファンド系の投資家が裏にいるとの憶測もありますが、時価総額で1,000億円規模の企業がここまで思い切った株主還元・資本政策を行うというのは聞いたことがありませんでしたね。
企業業績に関してはかなりのネガティブニュースですが、株主還元・資本政策という意味ではポジティブニュースと捉えられるのではないでしょうか。
併せて発表された自己株式の取得は7月からということですが、市場はどのような評価をもってこのニュースを捉えるのでしょうか。
上がるのか、下がるのか、いずれにしてもこのような企業がでてきたこと自体は、日本株式市場にとってポジティブなニュースと捉えていいのではないでしょうか。
こーた
『N女の研究』中村安希
NPOというキャリアも存在する
書籍レビューです。
中村安希氏の『N女の研究』を読みました。
久々に良作を読みました。
ノンフィクション作家によるドキュメンタリー作品ですね。
「NPOなどの非営利セクターから営利の社会的企業までを含めたソーシャルセクターで働く女性を総称してN女と呼んでいます」
「大企業に就職ができる高い学歴や高い職歴、事業の企画運営ノウハウ等をもちながら、あえてソーシャルセクターを就職先に選ぶ女性たちが出現し始めている」
そんなN女10名にインタビューした結果を記載した作品が、この『N女の研究』です。
1番印象的だったのが、『自己を犠牲にしない』という軸です。
NPOと聞くと、され社会貢献だ、やれセーフティーネットだ、と自己を二の次にした喜捨の精神論が思い浮かびますが、当作品で強調されていたことは、まず自己を犠牲にしない、ということです。
自分は社会の一員であり、自分が幸せになれないのに、どうやって他者を幸せにするんだ、という至極一般的な考え方の下で、N女たちが行動していることで、共感を持てます。
その上で、『かつては家族(血縁)、会社(社縁)、地域(地縁)といった中間集団によって社会につなぎとめられていたが、それらの共同体が機能を果たせなくなったことで、社会的に排除されるヒトがでてきた』事実を如何に良い方向に持って行くか。
登場するN女たちが、ここについてどのような考えをもっているか、あるいはどのような人生経験を経たことで、そのように考え方になったのか。
その展開が大変興味深かったです。
また作品全体を通して、N女のインタビューが転載されている訳ではなく、作者の軸を中心に解説がなされているため、当事者の人たちの意見はそのままに見事に現代社会が描写されており、非常に作者の訴えが伝わりやすく、考えさせられる部分が多分にありました。
またティーチ・フォー・ジャパンやコモンビート、クロスフィールズといったNPOを知る良い機会になりましたし、『世の中には社会に進出したくない、性別役割分担を維持したい、地位向上を目指してガツガツしたくない、実は子供が嫌い』というように、[女性]という一つの枠で考えることはできない、『女性社会が一枚岩でない』という主張も大変説得力がありました。
ソーシャルセクター、と聞くとまだまだ異世界な印象を受けてしまいますが、これが今後はもっと一般的な世の中になっていくのでしょうね。
こーた